一方、保守的なものは一切つくりません。食材の旬は配慮しますが、食材の雑味や野生くささを守り、特徴を消さずにぶつけ合うことで生まれる相乗効果を追求しています。

また、私たちは干肉、サラミ、プロシュート、生ハム、酢なども、自分たちでつくります。特に熟成肉に関しては、日本古来の「干し肉」文化を世界へ示すため、減塩して、あえて「青カビ」を付着させて熟成させるという独自の手法を編み出しました。「湿度も高く寒暖差も高いこの地で、このカビが生える意味がある」と考え、どぶろく同様、目には見えないものの声を聴きながら、素材の旨味を引き出す方法に辿り着きました。

さらに、築200年の米蔵を移築して建てたレストラン、故人作家が残した器や時代物の器、そして店内を彩る花々など、料理を一層輝かせる空間づくりを意識しています。